宝塚歌劇団宙組の娘役、有愛きいさんが亡くなった問題で宝塚歌劇団とそのファンたちの間に衝撃が走っています。週刊文春での「ヘアアイロン事件」そして本事件の被害者と報道された有愛きいさんの死に関して様々な憶測や噂が流れています。
10年以上前、宝塚音楽学校時代の96期生の中でイジメが起き、裁判沙汰になったことを脳裏に浮かべた人も少なくないでしょう。
かつての96期イジメ問題とはどのようなものだったのでしょうか。当時の音楽学校の対応を振り返ってみたいと思います。
96期のイジメ問題の概要
宝塚96期生とは2008年に宝塚音楽学校に入学し、2010年に宝塚歌劇団に入団した38名を指します。
厳しい入学試験をくぐり抜けて合格したのは40名ですが、歌劇団に入団したのは38名で2名足らないことになります。
これは卒業前に一名がいじめ被害が原因で退学処分に。そしてもう一名がブログでいじめがあったことがわかる記事を書いていたため自宅謹慎となり自主退学を選びました。(宝塚音楽学校・宝塚歌劇団ともに個人のSNS・ブログは運営禁止)
このいじめ被害者とされる女性は、それでも「宝塚の舞台に立ちたい」と原告として宝塚音楽学校を相手取り裁判を起こしましたが願い叶わず、調停で和解となりました。
彼女は宝塚音楽学校の卒業資格は与えられたものの、入団はできませんでした。
調停内容は非公開だったため、卒業資格は与えるが、入団は不可という条件を出したかどうかは不明とされています。
「盗癖があるので指導した」というのがイジメのきっかけ
宝塚歌劇団では実家から通える子以外は寮生活を送ります。この事件はその寮生活の中で起きたものです。
入学早々、原告は寮の部屋から物がなくなったことで原告が同期生から疑われることになります。
その後、コンビニで万引きをした、劇場で拾った財布をネコババしたなどの疑いもかけられ、また図書館からなくなった本を探すため監禁され、「いじめ」の正当化が行われたといいます。
そして初めは原告を庇っていた同期生も一人づつ原告を信用しなくなり増田。
また不幸にも本科生(上級生である95期)や学校側も、96期生たちが原告と接触させなかったことで盗癖について鵜呑みにしてしまいました。
その結果「いじめ問題」として扱われずどんどん孤立。そして原告を退学させるに至りました。
当時の宝塚音楽学校の対応は?
“音楽学校は当初、「いじめの問題ではございません」とHPでコメントしていました。しかし、提出された原告側の書類には、詳細ないじめの実態が書かれています。これに対し、他の生徒は「盗癖があるなら見守っていこうと思った」、音楽学校は「委員は厳しくあたってしまうこともあり、それがいじめということになったのだと思います」と述べるのみで、盗癖を立証することができませんでした。“http://takarazuka96.web.fc2.com/96/point-ijime.html
音楽学校内部で起こっていることとは反対に、万引きがあったとされるコンビニ側は万引きを否定していたそうです。
このような書き込みを見ると、コンビニの件では万引きがなかったように見受けられますが、財布の件では判断が難しいところですね。
しかし、これら万引き捏造を同期全体で後押しし、さらに学校がいじめを後押ししたと言われています。
委員と呼ばれる生徒の話だけを信じ正当な調査もしなかった結果、原告が裁判に訴え出ることになりました。しかし、当初下された仮処分(原告との和解勧告)を不服とした音楽学校側が裁判で争う意思を見せた結果、いじめ事件や音楽学校の対応について多くの人が知ることとなりました。
宝塚でいじめが起きる理由は?厳しい指導と閉鎖的な環境か
宝塚では毎年十数倍の合格率をくぐり抜けた40名ほどの精鋭がまず宝塚音楽学校で歌や踊り、演技などを学びます。
1年目の予科、2年目の本科を経て晴れて宝塚歌劇団に入団しお芝居やレビューの一員としてデビューします。
この本科・予科の2年間、40名の同じメンバーとともに学びます。
先輩・後輩の上下関係が行きすぎることは普通の学校の部活などであることですが、宝塚は特に規律が厳しく、上級生が乗った列車が見えなくなるまでお辞儀をしているなどのエピソードをOGの方がしておられることもありました。
また同期生という関係は、普通であれば仲間たちと平和に仲良く助け合いながら和気あいあいと過ごしますが、「私こそトップになりたい」「自分が1番でなければ嫌だ」「あの子が評価されている理由がわからない」など我の強さや嫉妬心、競争心を必要以上に持つ人がいたのかもしれません。
実際原告は96期の中で背が高く美人で目立っていたとの声もありました。
そしてクラス替えもなく同じメンバーで2年間を過ごし、厳しい規律の中ではみ出したものを嫌う閉鎖的な環境、誰かを陥れようと嘘をあたかも真実であるように言う人が現れると、狙われた人は追い詰められる結果になります。
また劇団自体も100年以上前から存在する老舗であるため、古い価値観に縛られている可能性もありますよね。96期裁判の進め方はもちろん、今回の有愛きいさんの一件に対する広報対応についても初動は人が1人死んでいるのにも関わらず冷たい対応であると非難されました。
また今回の有愛きいさんの件で宝塚歌劇団が記者会見を行いましたが、会見での対応について多くの批判が出る一方、理事長が会見しないことへの不信感を増す結果になりました。
5組の中で最も新しく誕生した宙組の体質が最近変わった?
宙組は1998年に創設された新しい組です。老朽化で東京宝塚劇場を建て替えるのを機に通年公演を実施するために新しく作られました。
長身の男役が多く、伸びやかでおおらかな組であることが特色でした。
また宙組で育った娘役さんが他の組で何人もトップ娘役となっています。
しかし宙組で育った男役の中でトップスターになったのは元雪組トップスター早霧せいなさんただ一人です。
残念ながら自組で育った宙組トップスターはまだ一人も誕生していないのが現実で、トップを目指し自らの芸を磨いてきた先輩たちがトップになれずに退団する後ろ姿を何人も見てきたことでしょう。
観客からはこの様子を揶揄して「調整組」などどいわれることもあったようで、トップにしたい他組の人材が多い場合に宙組で就任させるというものです。
いくら新しい組だからといってこんなことをやっていては組子さんの士気が低下することも当然ですよね。厳しくても目標があれば頑張れるということもあります。しかし、どうせ他の組からまたトップスターが来るんでしょ?と思うと劇団に対する不信感も次第に増加していっても不思議ではありません。